ブエナビスタは突然に
Love Storyは突然にというドラマが昔あったけれど・・・
私のそれは、ちょっとした不運から始まり、この上ないハッピーを掴んだ夜だった。
キューバ滞在中に宿泊していたCASAのご主人とママは、そこそこ面倒を見てくれるのだが、会話での意思の疎通ができない。
英語は通じず、こちらも西語は全くダメで、辞書アプリを頼りに単語の連発。
時折、同行した友人の義理の弟(キューバ人)が、間に入ってくれるが、余計面倒な話になることが多い。
滞在8日目の夜、明日は空港5時入りで出国するので、早めに就寝しておきたかった。
友人はお腹を壊したこともあって、最後の夜は(キューバ人の)家族と食事をすると言い、CASAの食事を断って外出。私は、友人の分だけ夕食を断り、私は在宅で夕食有り、と伝わったのだと思っていた。
部屋に残っている私は、在室です、居ますよ!をアピールし、ガタガタとわざと大きな音をたてたり歩いたりしていた。が、いつもの夕食の時間になっても、ママが呼びに来ない。ひょっとして・・・の雰囲気、私の夕食、忘れられてる?
業を煮やして、リビングに降りて、My Dinner?と尋ねるが、返事はNO!
あ~、マジか。 食いっぱぐれだ。
言葉の壁なのか、キューバ人のいい加減さ(友人はいつもこう言う)なのか、そんなのどっちでもいい。
お腹は空くのに何も無い(日本から持ってきた食材はロストバゲッジで皆無)すでに夜の8時を回って、外は真っ暗。
仕方なく、繁華街まで出れば、何か買えると思い、とにかくCASAを出る。
Capitorio、Obispo通り辺りへは、だいたいの地図はインプットしたし、人通りも多い。ハバナの夜道を歩くのは全然平気だ。
で、簡単なハンバーガーでも買おうと目論んで来たが、時間が遅いのか、そういうものを陳列している店が無い。
諦めて、先日、昼間にピザを食べた店に行こうと歩いていると、フルートの音が流れているレストラン発見。
おお、ギターとのデュオだ。何人かでサルサやソンを演奏している場面には出くわしたが、デュオはお初。速攻、店にIN。
テーブルには、本物のレコードがランチョンマット代わりになっている。隣の席に一人で座っていた男性が、コロッケのようなものが美味いからお奨めだよ、と自分の皿を指差す。
じゃ、コレ!&ダイキリを注文。
演奏中の曲は「Como Fue」だったので、私がナイス コモフェと言うと、なんで日本人がこの曲を知っているのか?と、超驚いて、質問攻めにあい、フルートのお姉さんとギターのお兄さんと、しばし会話した。
ここのミュージシャンには英語が通じる!
コロッケは美味しかったが、少々しょっぱかった(キューバ料理は往々にしょっぱいと友人は言っている)でも、ダイキリは最高に美味しかった。というか、キューバであまりお酒を飲めていなかったなぁ・・・(笑)
お腹も心も満ち足りて、いい気分で店を後にする。9時頃だったろうか。
街頭は殆ど無く、建物の灯りだけが道路を歩くときの頼みの綱。方角さえ合っていれば、碁盤の目なので、なんとか戻れるハズ。
と、とぼとぼ歩いていると、ちょっと雰囲気の違う、高級外車が入っていく建物。そこには白いスーツを着た、厳ついキューバ人が二人。
一見、マフィアのアジト?っぽい光景だが、違うのは、外車が止まった横に、大きな看板が。。。あれ、これどこかで見た。
そう、3日前に日中一人で歩いていた時に、現地のカップルに声を掛けられ、明日サルサパーティーに来ないか?と言われてもらったチラシの拡大版だ。
実は2日前の夜、友人とその場所に来ていた。ただ、ハリケーンによる計画停電の影響か、その辺り一帯は闇の中だった。人影も無く、サルサパーティなど、催されていもいなかったので、仕方なく帰ったのだった。
どう、歩いてそこに辿り着いたかはわからないが、ここは多分同じ場所だろう。
私は看板をマジマジと見て、マッチョな男に言った。前にこれに来たんだけど・・・で、通じただろうか? 男は何か言ったが、わかったのは、このワードだけ
「Si、Buena vista Social Club」状況証拠ならぬ状況会話で、今ここでブエナビスタの演奏がある、と理解した。30ドルだという。
まさかの3000円?この白スーツマッチョのキューバ人が悪者だったら、私は生きて帰れないかもしれないけど、女は度胸、行ってみる事にした。OK、と言って、広めの階段を昇ると2階に、また別のマッチョな男が待っていた。
よく映画とかで見る、マフィアの親分の部屋の前には用心棒が控えている的な感じで立っているのだ。そこでそのお兄さんにとりあえず30ドル払う。
そうすると、開けた場所、屋外の回廊に案内された。
1階からの階段も雰囲気はステキ、こんな建物、映画とかでしか見たことない、さすが世界遺産の街の建物だ。通された先には、客席があり、観光客で埋まっていた。
この状況で、やっと安心できる。多分、生きて帰れるだろうし、もしブエナビスタじゃなくても、ステージとバンドがいるので、何かしらの演奏が聴けるだろう。
私は最後の客だったようで、白人のカップルの席に相席で座り、飲み物を聞かれたので、ここはモヒートでしょ、と、本日2杯目のアルコールを注文、MCが挨拶をはじめ何を言ってるかはわからないけど、聴こえてきたのは「Chan Chan」だった。
感激で泣きそうだった。本場、本物、生Chan Chan!
その後は、ただただ、次々と演奏される本物のCUBAN音楽とSalsaに酔いしれるだけ。アルコールに弱い私だけれど、モヒートはジュースのようで一気に飲んだ。
往年のスターが、端っこの私の席まで来て、手を振り「ハポン?」と
言葉をかけ、歌って、踊って、夢のようではないか。
途中、ステージ前まで借り出され、踊らされた。超、楽しい。
と、夢のような時間はあっという間に過ぎていき、もう11時。明日は帰国で4時起きだ。飛行機に乗り遅れたらタイヘンなので、最後までいたいのは山々だけど、ここらで帰らなくては。。。
後ろ髪ひかれる、とか断腸の思いというのは、このことだ。
席をたって、出口にいたお兄さんに、帰る、と言うと10ドルだという。
2杯飲んだからか・・・それでも、日本でも2杯1000円は当たり前。
なんたってブエナビスタのミユージックチャージが3000円は、キューバ価格だった。
キューバ在住の方のブログで知ったのだけれど、オマーラは現役で歌っているとのこと。この日は出演していなかったのが残念。
また、いつか(早いうちに)キューバに行って、オマーラの歌声を聴いてみたいものだ。
こうして、真っ暗なハバナの夜道をCASAに向かって帰っていった。
CASAでは、出て行ってから何時間も何をしていたのか?という怪訝な顔で迎えられたが、こんなにいっぱい楽しいことがあったよ、とルンルン気分が伝えられないのは超もどかしかった。
次までには、言葉の壁をなんとか小さくしておかなくては。
今回の偶然ハッピーは、自分だけの思い出にしておこう。