ハリケーンの夜
季節はずれの台風21号が関東直撃。
各所で被害が出た模様。
自然の猛威の前に、人間は成すすべが無いのですね。
先月、中南米に甚大な被害をもたらしたハリケーン「イルマ」がキューバに近づいている9/9のハバナの夜のこと。
日中は曇天ながらまだ外出できたので、旧市街に繰り出したけれど、街はハリケーンに備えるべく、窓に板を打ち付けて養生し、明るいうちから店じまいをして、観光客で賑わうであろう通りの人影もまばら。
風もかなり強くなり、雲行きも怪しくなってきたので、ハバナの代表的建物、国会議事堂カピトリオから歩いて20分ほどの住宅地にあるCASA(民宿)に戻ることに。
途中の配給所でも、ハリケーンに備えての閉鎖か、物資が来なくなっての閉鎖なのかわからないけれど、配給所の扉が閉ざされ、その廻りに人々が群がり怒号が飛び交っている。
小さな暴動状態。
一触即発、危なそうなので、離れて遠巻きに見ながらCASAに戻る。
住宅街のCASAの前の通りには、これからハリケーンが来るというのに、のんびり路肩にたむろしている人々。家に帰らなくていいの?と思ってしまうけれど、夜になるにつれ、人の数はどんどん増していく不思議。
CASAの主人が、私の部屋もハリケーンに備える、というので、てっきり窓に板でも打ち付けるのかと思ったら、窓の外に掲げていた旗を窓枠に結んだだけで終了。。。
窓ガラスは大丈夫?と訊くと、「心配ない」と言う。
私の部屋は3階で、この家は改築しているようだけれど、多分建築当時は1階から伸びるステンドグラスのような大窓(があったであろう)の突緑の丸い部分が、私の部屋の窓になっている。
キューバの一般民家にガラス窓がある家は殆ど見かけ無い。
物資が乏しいこの国で、ガラス窓があるというのは、裕福であるということの象徴らしい。
夕食後、何もすることがなく、早々に寝ようかとベッドに入る。
テレビも無く(別の部屋にあるけれど、映りが悪い)インターネットも無く、外出でもしない限り暇を持て余してしまう。
横になって、まだ雨の音は聞こえないけれど、ハリケーンが来たら大丈夫だろうか、と少なからず不安に思っていたところに、通りにたむろしていた人達の歌声が聞こえた。
「Sandunguera,
se te va por encima la cintura」
なんとLos Van Vanの「Sandunguera」だ。
♪ Sandunguera!の大合唱が始まったのだ。
キューバで初めて聴くキューバソングが、大好きな「Sandunguera」だなんて、なんて感激!
1988年リリース、もう20数年前の曲なので、キューバでは懐メロだと聞いていたのに、さすがはLos Van Van、根強い人気。さすがです。
と、生歌を聴けた興奮も納まり、なんで今、Sandunguera?という疑問が沸いてきたので、CASAの主人に尋ねると、首をかしげ、「ハリケーン?」
え、そうなの?ハリケーンはお祭りじゃないよね? これから凄いのが来るのに・・・
みんなで歌って盛り上がって、どうする?
Sandungueraの大合唱は、いつの間にか消えていて、代わりに雨音が聞こえてきた頃、眠りについたような気がします。