Noche en Cuba ★キューバの夜

Orquesta Del CeroとCubaのことを、あれやこれや書いてみます

チューチョ&ルバルカバ の夜

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10/23 台風一過、午後には陽も差して清清しい秋晴れ。

キューバ出身のピアニスト、チューチョ・バルデスゴンサロ・ルバルカバの二人による、夢のような競演を聴きに行った。

http://www.bluenote.co.jp/jp/artists/chucho-valdes/

ブルーノート東京で、10/22~24の3日間、6ステージの公演。

1ステージ¥9000と、庶民には少々お高めのチャージだけれど、チューチョも齢76で、日本で聴けるのはもしかして最後?かもしれないので、ここは見逃せない。

私は1stを聴いた。

18:30、ブルーノートの薄暗いフロアの奥から、大きな身体のチューチョと、その後ろから小柄なルバルカバがゆっくりと登場。

会場に響く拍手。おぉ、チューチョだ。。。思わず声が出てしまう。

ステージ上には2台のグランドピアノstainwayが向かい合わせにセッティングされていて、向かって左側がチューチョ、右側がルバルカバだ。

私は、ラッキーなことに、チューチョ側のステージのかぶりつき席に座ることができたので、憧れのチューチョに手が届きそうだった。

静かに弾き始めるチューチョ、それに応えて弾き始めるルバルカバ。

二人の呼応は静かに、優しく、美しく、時に激しく、情熱的に、挑発的に、リズミカルに、笑いながら、滑らかに・・・会話が進む。聴衆は息を呑んで、会話に耳を傾ける。

使う言語はJazzだけではなく、バッハ?ショパン?(実際ワルツ弾いてました)ショスターコービッチ?マーラー? あ、今はラテンね?的な幅の広さだ。

目の前で繰り広げられる、とてつもない超絶技巧の数々。

「神の手」と言われるチューチョだけれど、神の領域は突出しているように思える。

76という年齢で、あれだけ指が動くということが、まず神を超えているし、大人の演奏、年齢が醸し出す良い意味での「枯れ」が味を出している。

ルバルカバは54歳、超絶技巧も超超冴えて、脂がのっているが、チューチョにしてみれば、まだまだ息子世代だ。

チューチョはルバルカバの会話の切り出しを、静かに、静かに、頷きながら父のように見守っているような気がした。

この二人、超絶技巧の応酬も白熱して見もの(聴きもの?)だけれど、どんなテクニックを繰り出しても、「音」が美しい!

Jazzピアニストにたまに見られる、ぶっ叩きタッチが無い。

どんなに速くて複雑なパッセージを弾いても、真珠の粒が絹の上を転がっている。

もちろん、叙情的な旋律には、その繊細な美しさに涙が出そうになる。

○×○×ホールでクラシックのピアノソロを聴いても、こうはならないかもしれない。

客席を寄せ付けない広すぎるステージは、どこか冷たい。

手を伸ばせば届く位置にチューチョが座っているから、耳だけではなく、目でも感動を味わえるし、体温だって伝わってくるようだ。

息遣い、表情、手はもちろん、足の動きも、身体の角度、座り方、あらゆる一挙手一投足、食い入るように見られたことは、ものすごく相乗効果大だった。

1時間の演奏を終えて一度二人でステージを降り、鳴り止まぬアンコールでもう一演奏。

時間にして1時間10分少々。

短いけれど、濃厚で甘美な時間を過ごすことができた。

ルバルカバは、今後も来日が見込めるけれど、チューチョはまた来てくれるかなぁ?

まだまだ元気で活動してくれることを、切に願います。